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最高裁判所第三小法廷 昭和40年(オ)582号 判決 1966年4月12日

上告人(被告・控訴人) 貝塚正之助

被上告人(原告・被控訴人) 日興信用金庫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山下則義の上告理由第一点について

原判決(引用の一審判決を含む。以下同じ)は、被上告人が、本件抵当物件の競定価格が二五一万二〇〇〇円であること、および右物件については滞納処分としての差押通知がなされていて優先租税債権が存在することが明らかであったことを考慮し、競売処分を遂行しても、これによって上告人から二〇〇万円以上の弁済を受けることが不可能であると判断し、二〇〇万円の弁済を受けるとともに本件抵当物件に存する抵当権を放棄した処置をとったのであり、右処置は相当であって、被上告人の故意または過失により担保を喪失した場合にあたらないと判断しているのであって、右事実関係に照らして、右判断は首肯しうるところであるのみならず、原判決によれば、上告人は被上告人に対して担保の喪失または減少につき民法五〇四条の規定にもとづく免責の主張をしない旨特約をしたというのであるから、被上告人の本件抵当物件保存義務違反を容認した違法があるとして原判決を非難する論旨は、理由がない。

同第二点について

上告人および被上告人間に所論甲一号証の所論特約文言の記載のとおりの約定がなされたものであって、右文言は単なる例文にはとどまらない旨の原審の判断は、その挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。右特約の存在が本件訴訟の第二審においてはじめて主張されたからといって、これを以て右特約が真実に存在しなかったと判断しなければならないわけのものではない。

なお論旨は、民法三九四条の適用を云為するが、原審でなんら主張判断のなかった事項であるのみならず、上告人は連帯保証人として被上告人に対し主債務者たる訴外南雲藤吉と同一内容の債務を負担するものであるから、一般債権者の異議権を規定した右法条の認知するところではない。

従って、論旨はすべて採用できない。

同第三点について

上告人の所論自白が真実に反するものとは認められない旨の原審の判断は、その挙示の証拠関係に照らして、肯認するに足りる。従って、原審が右自白の撤回を許さなかったのは、当然である。論旨は、原審の認定にそわない事実を主張し、独自の見解に立って、原判決を非難するに帰するものであって、原判決に所論の違法は認められないから論旨は採用できない。

よって民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎)

上告理由<省略>

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